『手作り火吹き竹』
(昔の人は知恵を出して豊かな生活を作り出していたことに学ぶ)
理事 中能孝則
そんなに遠くない昔。子どもたちは、地域の広場や自然の中で仲間と群れて遊ぶことが日常的でした。川遊びをしたり、海で貝や魚を採ったり、野山では木の実を採ったり、野生動物を追いかけまわしたり、地域の広場では缶蹴りや鬼ごっこ・チャンバラなど、日が暮れるまで夢中になって遊んでいました。
そしてこれからの季節になると焚き火を楽しんだ記憶がよみがえってきます。
中間と寄り合って焚き火を楽しみ、そのぬくもりも感じることができました。そして火の怖さについても、十分に体験することができたように思います。
そのような視点から、
子どもの焚き火体験を応援するグッズの一つである、火吹きだけについて、能書きをしたためてみました。
資料作成:NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟 中能孝則
田舎の生活にタイムスリップしてみると懐かしい生活様式が思い出される、その一つに火吹き竹がある。長めの火吹き竹だけは五右衛門風呂を炊くときの必需品(写真上段)で、短めの火吹きだけは土間にあったかまどで使われていた(写真中断)。写真下段は竹の曲がり具合が気にいったので只今制作中の竹)
この火吹き竹も最近ではキャンプの時の火おこし以外は必要性を感じないが、火吹き棒という名で調べてみると、数百円のものから1万円くらいまでさまざまであり、伸縮して持ち歩きしやすい物から長いものまでデザインも豊かで個性あふれるたくさんの種類が販売されている。ここまでくると実用品というよりコレクションではないだろうかと思うこともある。
また、火吹き竹を調べてみると、なんと千円から3千円くらいまでこれまたバラティーに富んだものが販売されているから驚きである。
しかしここで紹介する火吹き竹はまだどこでも見たことがないような気がする。となると私の生まれ故郷である甑島(こしきしま)のオリジナルではないだろうか。と勝手に思い紹介させていただきます。
その特徴は先端部分の二本の角である。なぜ角があるのか小学生のころ父に聞いたことがあるが、父からは二つのことを教えてもらった記憶がある、一つ目は竹の先端で生火を押したりずらしたりするときに、この角があることで、竹の先端が焦げないようにしてあるとのことであった。もう一つは息を吹きかけると竹の先端に空いている小さな穴から勢いよく風が出るのであるが、角のあるおかげでその風の勢いが増すとのことであった。
二つめの理由については検証したわけではないので、正しいかどうかは定かではないが、小さい時に教わったものは今でもしかりと記憶に残っていて、竹とノコとキリと節を抜く鉄の棒があればすぐにでも作ることができる。
最近では田舎でも風呂に入る前にお湯用の蛇口をひねれば数分で風呂に入ることができて便利である。しかし私は、田舎に帰ると今でも五右衛門風呂を焚いてもらうことがある。火吹きだけはその風呂焚きの必需品であり、所定の場所に鎮座している。また、薪で沸かした五右衛門風呂にはいると身体の芯まで暖かくなり湯冷めもしないような気がする。
たかが火吹き竹、お金を出せばすぐに買えるこの時代であるが、記憶の根底にあるのは生活の不便さを解消するために先人たちが知恵を出して作り出されたものである。
生活は便利な方が良いことは百も承知であるが、便利さに隠れて知恵を出す機会が少なくなってはいないだろうかと思う今日この頃である。
私の山荘ではBBQやたき火には、今でもこの火吹き竹を使っており欠かすことのできない友である。 そして、私は『森のようちえん冒険学校』の執筆にあたり、幼児青少年のうちに、火遊びの楽しさと火の怖さの体験を心と体にしっかりとしみ込ませてほしいと願っています。